腹違いの兄がいて・・・

遺言に関する事例3

35歳のAさんは途方にくれた顔で話し始めました。
「おもちゃ店経営の父親の葬儀を無事終え一息ついたころ、父が遺言を残してなかったので、母、長女の私、妹の計3人で話し合った結果、『母が全てを相続する』にすんなり決まったのですが、その際に、父の戸籍を調べたら、私たち姉妹になんと会ったこともない腹違いの兄がいることが判ったんです・・・。」
相続財産といっても、亡くなった父親には預貯金などほとんどなく、両親が夫婦二人で裸一貫からコツコツ営業してきた、青果店の土地と建物だけでした。
『母が全てを相続する』という遺産分割協議書を作成して、腹違いの兄に送付したところ、2週間ほどで、兄が依頼した弁護士より、署名押印の拒否および遺産分割協議のやり直しを要求する旨の内容証明郵便が届きました。母が絶望に暮れるのが、手に取るように分かったと、Aさんは教えてくれました。お母様はこの青果店の売り上げで生活していますし、何よりお母様にとって、この商売は生きがいにもなっていました。いわば命と同等の土地なのです。
しかし、結局その命の土地を手放すことになってしまいました。もちろん青果店は廃業になり、母はAさんの住む小さな賃貸アパートで暮らすことになりました。
それからのお母様は、抜け殻のようになり、毎日泣いてばかりだそうです。

コメント

この事例で一番の罪作りは誰なのか。相続分を主張された腹違いのお兄さんでしょうか。いいえ、違います。お兄さんは、法律上認められている権利を、主張したまでです。それでは、一体誰が罪作りなのでしょう。もちろん、遺言を遺さなかった父親です。それにしても残された奥様の無念は計り知れないでしょう。

遺言があったなら

「妻に全財産を相続させる」+「遺言執行人を妻にする」とする遺言を公正証書にして遺しておけば、問題はありませんでした。さらに、念のため付言事項で、子供たちには遺留分を主張しないようにという旨のメッセージを残すだけでよかったのです。
ただ、いくら遺言を残しておいても安心できない場合があります。というのは公正証書遺言であれば、お兄さんに知られることもなくスムーズに手続きが出来るからいいのですが、もしこれが、自筆証書遺言で遺されていた場合、スムーズにはいきません。
なぜかと言うと、自筆証書遺言の場合、家庭裁判所の「検認」が必要なのです。この場合、家庭裁判所から全相続人に通知されてしまいます。そうするとお兄さんが、父親の死を知り遺留分請求をするかもしれません。
ただ、もちろん公正証書遺言を残したとしても、どこかで腹違いの兄が父親の死を知る可能性はもちろんあります。そういうときのためにも、付言事項を利用して父親のメッセージをしっかり残しておくことが大切なのです。そうすれば、腹違いの兄が受ける印象もちがったかもしれません。それに、万が一、遺留分を請求されたとしても、通常の法定相続分の半分なので、分割払いにするなど、青果店を手放すことなく、商売を続けられる可能性がいくつもありました。ここに、遺言を残す意義があるのです。

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