家族全員仲が良い場合は相続トラブルとは無縁か?

遺産分割とは、相続財産について、誰がどの財産を相続するのかを確定する手続きのことです。

遺産分割をするには、相続人全員で話し合って合意しなければなりません(遺産分割協議といいます。)が、相続人のうち一人でも合意しなければ成立しません。
当事者間で遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所での遺産分割調停や遺産分割審判によって遺産分割の内容を決めることになりますが、裁判所を利用するケース、つまり調停や審判にて決するというケースがここ10年間で約25%も増加しています。

遺産分割協議がまとまりにくくなっている原因の一つは、親子間の経済格差です。
たとえば、親(被相続人)の世代は高度経済成長期やバブル期に働き、蓄えもあり、年金ももらえる人が多いのに対し、子(相続人)の世代はバブル崩壊や長引く不況によって職を失い、事業に失敗し、年金がもらえるかもわからないという人が多くなっています。
そのため、経済的に余裕のない子の世代は、親の相続にあたって「法律的に権利があるのだから、もらえるものはもらっておこう」と考えるのは当然でしょう。

相続紛争が増えるもう一つの原因は、親(被相続人)世代の高齢化とこれに伴う介護の問題です。
確かに医療の進歩によって、男性は80才、女性は87才まで平均寿命が延び、高齢者人口も3400万人を超え、認知症の人数も約470万人に達し爆発的に増加しています。
それ以外にも「隠れ認知症」の方もたくさんおられるでしょうし、脳梗塞の後遺症や骨折などで日常生活が不自由な高齢者の数はかなりの数になると思います。
こうした方は介護が必要になりますし、介護の大変さは経験した者でなければ理解できません。
ですので、被相続人を介護していた相続人と、そうでない相続人との間では、相続に対して深刻な意見の対立が生じやすくなります。
さらには、核家族化により親兄弟が遠隔地でバラバラに暮らしていることで、親の相続財産に対する誤解や疑念が生まれる原因にもなります。

家族全員の仲が良いのは大変好ましい事ですし、相続紛争が起きなければそれに越したことはありません。
しかし、そのような家族でも相続紛争が起きることがあります。
相続紛争を予防するための第一の要が遺言書ですが、仮に遺言者が認知症にでもなれば、遺言能力が障害となって有効な遺言を遺すことができなくなります。
また、日本人の死因の約3割を占める心疾患、脳血管疾患、事故などで死亡するケースでは、遺言書を書く時間的余裕がないという事も少なくありません。

以上の事柄から、たとえ現在の家族関係が良好であっても、心身ともに元気なうちに遺言書を書いておいた方が良いということは言うまでもありません。