遺言の種類にはどんなものがあるのか?
遺言には大きく分けて普通方式の遺言と特別方式の遺言があり、普通方式の遺言には自筆証書遺言、公正証書遺言及び秘密証書遺言の3種類があります。
1 自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が遺言全文、日付、氏名を自書し、捺印することによって作成する遺言書です。
自筆証書遺言では証人が不要なので、自分一人で自宅で作成することができます。
ただし、パソコン等で印字して作成することはできません。
また、遺言書の中の加筆や削除その他の変更は、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ効力を生じないとされています。(民法第968条)
なお、自筆証書遺言については、相続開始後に家庭裁判所において検認手続きをとる必要があります。(民法第1004条)
ただし、自筆証書遺言は法律で定めた要件を満たさないために無効になったり、記載内容が曖昧なために紛争になりやすいと言われています。
原本も1通しかないので保管方法にも気を遣わなければなりません。
2 公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人が法律で定められた方式に従って作成する遺言書です。
公証人とは、公証役場において、ある事実や契約の成立を証明・認証する職務を行う公務員で、法務大臣が任命します。
公正証書遺言の方式としては、証人2人以上の立ち合いが必要であること、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口述することなどの要件があります。(民法第969条)
公正証書遺言は通常は公証役場で作成しますが、入院中の場合などは公証人に出張してもらって作成することも可能です。
公正証書遺言の作成方法は自筆証書遺言に比べれば若干面倒ですが、相続開始後の家庭裁判所への検認手続きが不要であること、公正証書遺言の原本が公証役場で保管され紛失の危険がないことや、平成元年以降に作成された公正証書遺言は全国300か所の公証役場で検索してもらうことができ、その存在が明らかになるなどのメリットがあります。
3 秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言の内容を誰にも知られたくない場合の方式です。
具体的には、遺言者が遺言書を作成して署名捺印し、これを封筒に入れて封印し(封印にも遺言書に押したのと同じ印鑑を用います)、これを公証人1人及び証人2人以上の前に提出して、公証人に認証してもらいます。(民法第970条)
この方式では、遺言書の内容は署名を除いてパソコンやワープロで作成できますが、公証役場が遺言書を保管するわけではないですから、紛失の恐れがありますし、相続開始後の検認手続きも必要です。
4 特別の方式による遺言
民法は、特別の方式による遺言として、死亡の危急に迫った者の遺言(危急時遺言)、伝染病隔離者の遺言、在船者の遺言、船舶遭難者の遺言の4種類を定めていますが、いずれも例外的なものですので、ここでは割愛させていただきます。