全財産を一人に譲ることはできるか?
遺産分割において、民法で定められた法定相続分はあくまで目安であり、遺産相続では「法定相続よりも遺言による相続が優先される」という大原則があります。
もし全財産を一人に譲りたいという被相続人の意思があるなら、遺言書を作成する必要があるでしょう。
「全財産を一人に相続させる」旨の遺言書は、その遺言書自体に問題がない限り基本的には有効です。
ただし、配偶者や直系卑属(子や孫)、直系尊属(父母や祖父母)が相続人の場合は、遺留分を侵害してしまうことになります。
遺留分(いりゅうぶん)とは、「遺言によってもなくすことができない相続権の割合」です。
遺留分は相続人に与えられた権利ですが、遺留分減殺請求権を持つことができるのは、配偶者と子ども、父母だけです。
兄弟姉妹には遺留分はありません。
また遺留分は、遺留分減殺請求権を行使してこそ、その効力が発生します。
ですので、意図的に請求しない場合や、時効を迎えた場合は、遺留分を渡す必要はありません。
ちなみに遺留分減殺請求権の時効は、相続の開始、または遺贈を知った時から1年です。
つまり、タイトルの問いに対する答えとしては、「他の相続人が遺留分を主張しなければ可能」ということになります。